2025年7月20日日曜日

閑話番外 その百七十六

 


 次女は雨の為白馬三山縦走を諦めた。雨の稜線歩き(勿論森林限界超えの)は辛いだけだ、とも書いた。あたしゃ何処でその辛い思いをしたっけ。

 真っ先に思い浮かんだのは、夏の農鳥小屋からを越えて樹林帯に飛び込む迄の短い間だ。上の写真が農鳥、借り物です。当時のあたしの雨具はポンチョだった。どんな昔なんだ?3000mで雨風に晒されてポンチョ、断る迄もなくバタバタでビショビショだ。雨具を着てないに等しい。樹林帯に入ったら、フアーっと暖かく感じた。風が緩んだからだ。風に当たり続けるのは実に危険だ。

 次に浮かんだのは、谷川連峰で小障子の避難小屋が満員だったので、万太郎を越え(良く越えられたものだ、若さです)毛渡乗越でビバーク、翌日毛渡乗越から平標、そして松手山へ下る迄の間だ。秋だったが雨の寒さより風が凄くて、仙ノ倉から平標間は砂や小石が顔に当たって痛くて参った。

 さてお次。中央アルプスの奥念丈岳から南超百(みなみこすも)を越して中山避難小屋への道に入ったとこ迄。雨風は強かっただろうが、その後の出来事が衝撃的なので印象はない。何があったかはラベル”迷った話”に詳しいです。え、興味ないって? ああ、そうかい。

 で、次はないのだ。針ノ木の冬季小屋から針ノ木雪渓を雨の中下った時は、稜線ではない。爺ヶ岳東尾根の肩から種池山荘で幕営する迄は風雨に叩かれたが、短い間だ。三伏峠への登りで降られたのも稜線ではない。甲武信岳の登りも樹林帯だ。

 強いて上げれば上越の旧三坂峠から三国峠間だろうか。小雨で、方向を間違えない為の苦労の方が大きくて風雨は記憶にない。風が強かったのは確かだ、ツェルトの下に吹き込んだ風で、雪を融かしていた水をひっくり返されたのだから。

 思えばあたしは稜線では殆ど降られてない。ガスの中も多かったが、ラッキーでしたよ。

2025年7月17日木曜日

閑話 その五百一

           

 今年は残雪が多い。先月末に次女が白馬へ行って来た。栂池から入って白馬山荘泊、三山縦走を予定していたが、二日目が雨だったので断念、大雪渓を下った。猿倉の下で林道が寸断されているので、更に一時間半下ってタクシーに乗ったと言う。

 乗鞍迄は雪道、稜線に出ると雪はたまに出会う程度、高曇りの快適な稜線漫歩だった様だ。小屋泊まり且つ食事付きなので荷物は軽い。さぞや歩度も捗っただろう。

 あの大きな小屋に宿泊者は次女も入れて四人のみ。六月は空いているんですなあ。空いているのは嬉しいが、会計の時に思わず聞き返したと言う。一万七千円だった。え、昔は二食付いても一万円なんてしなかったぞ。

 昔じゃないんですなあ。食事もちゃんとしてるし。カレーライスだけ、なんてえのはもうないのだ。下手な旅館並の食事だ。ありとあらゆる物質は地上から持ち上げる。ボッカが背負う時代ではない、南アルプス南部は別にしてだ。物資はヘリで上げる。そう思うと安い位なのだ。昔は昔今は今です。

 「小屋泊りは楽で良い」と次女は言うが、あたぼうよ、テントを張ったり畳んだり、水汲みや炊事の準備、マットを広げてシェラフを用意、食事を作って後片付け、トイレは表に出掛ける、何て手間が一切ない。そして布団で寝れる。混んでたら地獄の様だが、たった四人です。そりゃあ天国だ。高いけど。

 

 雨の為縦走は流れたが、それで宜しい。雨の稜線歩きなんて辛いだけだ。必ず風が出る。遮る物がないから吹かれるだけ。足元も危うい。そこを無理して遭難騒ぎを起こす人間の何と多い事よ。

 大雪渓は無事に下れた。ここんとこ落石事故が続いていたが、雨の中何事もなかったのは目出度い。雪渓下りは風も避けられるので上等な判断だ。

 白馬岳、あたしゃもう二度と立つ事はないですなあ。





2025年7月14日月曜日

休題 その五百八十四

 


 昨日は忙しかった妻の休日で「何か見る映画ある?」と言うので、ネットフリックスで「アド・アストラ」を見た。ディズニーに買収された20世紀フォックス最後の作品。ブラピが主人公でその父をトミリージョーンズが演じている。

 父親を捜しに(或いは始末しに)海王星迄行って来る話。宇宙物だが感情物の要素が大きい。哲学的に読み解く人もいるが、キリスト教的に見ればそうかも知れない。大掛かりな「自分探し」との評は合っているかも。

 妻は意外と面白がっていたのが驚きだ。勿論細部は不明点が多くて何かと訊かれた。途中で寝るかと思っていたんだけどw 殆どがブラピの一人芝居、彼でなければもたなかっただろう。流石に凄く巧い俳優だ。

 あたしはブラピの心情変化や、地球外高等生物の発見なぞどうでも良い。海王星へ行く宇宙物として見るので、突っ込み所が多過ぎて唖然とするのみ。「2001年宇宙の旅」のもの凄さを改めて感じてしまった。

 たった一人で火星から海王星へ行き、残ると決めてる父を(セットした核爆弾と一緒に)置いて一人で地球へ帰る。その孤独さ、宇宙の表現不能な大きさを感じさせてはくれない。せいぜい地球周回軌道上位の感じなのだ。それって違うでしょうが、海王星は近い時でも435千万㎞離れていて、光速でも四時間以上掛かる。今の技術では到達不能、映画は大分先の事なので七十八日(!)で着く。それでも宇宙の孤独と広さは感じられなきゃさあ。

 詰まらなかったのか、と問われれば否と答える。面白かったのか、と問われれば、うーん、と答える。どっちなんだろうねw

 妻が寝なかったんだから、緊迫感は常にあったのだ。B級感には無縁であったし、A級感すらあった。ブラピの功績が大きいんだろうけどね。お薦めはしないが、見たい人がいればとめません。

2025年7月11日金曜日

休題 その五百八十三

 


 井上尚弥に絡んで絡んで「俺から逃げるな」「腹を切れ」なぞと挑発を続けたムロジョン・アフマダリエフと、九月十四日に名古屋で対戦が決まった。

 井上チャンピオンは逃げていたのではなく、WBAIBFスーパーバンタム統一王者だったアフマダリエフがフルトンに負けて王者転落、依って新王者のフルトンと対戦して勝ち、その後のスケジュールをこなしていただけだ。アフマダリエフもそれは分かっていたのだろうが、忘れられるのが怖かったのかなw

 井上チャンピオンが前回のカルデナス戦で、綺麗なダウンを奪われて皆さん慄然とした。そのカルデナスのトレーナーがアフマダリエフのトレーナーでもある。アフマダリエフはタフでパンチ力もある曲者だ。さぞや打倒井上の作戦を練り上げて来る事だろう。

 尚弥はインタビューで「相手がそういう戦略を立ててきたとして、九月十四日の井上尚弥は違うぞと、本気を出させていただきます」と頼もしい。「自分の中でも最高の強敵」「今回は判定決着でもいい。しっかり勝ち星を取りに行く強い気持ちで戦いたい」「そういう時の井上尚弥が一番強いと思っている。そういう時こそ劇的なKOシーンが見られると思う」と力強い宣言をした。

 ネリ戦と前回にダウンを喫したのは、相手を倒そうと攻めを急いだ為だろう。尚弥は華麗なKOを期待されているのでどうしても無理をする。判定でもいい、と思えば無理なく実力で勝てる訳だ。

 アフマダリエフがタパレスに敗れた試合のハイライト編集を見た。改めてタパレスは巧いと思った。タフなタパレスですら12ラウンドには疲れたらしく、右を喰ってよろめかされた。タパレスよりタフなんだ!これは一寸と面倒な相手かもです。でも、アフマダリエフは何発もタパレスの良いパンチを受けていた。

 これが尚弥のパンチなら、その時点でKOかもです。楽観的過ぎますか?