2019年9月13日金曜日

夢で逢いましょう その一




 久方振りの本文です。閑話や休題ばかりなんで 、たまには本文がなくっちゃねえ。
 “こんな夢を見た”、黒沢明の作品“夢”の各エピソードの冒頭に出るフレーズだ。で、私の夢見る山登りの話。相変わらず、どうでも良い話ですなあ。私はすっかり慣れた。
 何時もの詰まらない突っ込みは無いのかって? 今回は無い。何年もやってりゃ、パターンも変えたくなるでしょうが、普通はさ。
 え、お前が普通だって??
 クッソ!うっかりやっちまったぜ……。忘れて下さい。
 マッキンレーを登る。チッチッチ、有る筈無い。従ってヒマラヤもアイガーも南極も無い。大体からして、飛行機なんざ乗りたくも無い。だに依って、北海道も山陰も東北も九州も北陸も、関西すらも無い。
 夢もクソも有ったもんじゃない話だ。そこんとこは、最初に謝っておきます。済みませんでしたねえ♪
 夢は夢だ。其れは妄想と言っても良い。世間では夢を持てと言うが、妄想を持てと言うに等しい。持つべきは“目標”で有るべきだ。
 さて、私の夢。
 テントを担いで普通に歩ける事。書き乍ら思わず涙が出ちまったぜ。こんなのって夢か?
 そうなの、今の私には、夢の世界だ。十年前なら、どうにか出来たのにさ。二十年前なら、鼻歌だったんだよ、冬山でもさあ。
 愚痴は止そう。夢を語る章なんだから。
 春に好天候が続く(夏でも秋でも冬でも同じ事)と予報が出た。信じ切れないが、取り敢えず信じよう。家に飛んで帰ると、ザックも靴もピッケルもアイゼンも揃って居る。足りないのは食糧のみ。
 其れは、近くのスーパーで買い揃えば済む話だ。スーパーで食糧一式買い揃え、ザックに詰めて、「じゃあねえ」と家を飛び出す。
 列車は?そんなの知るか!春に好天候が続くんだぞ(気象庁の言う事なんだけどね)、何にでも飛び乗りゃあ良い!
 行先は、頭の中に幾らでも有る。其のうちの何処かにするのだ。そして好天の雪の山で過ごすのだ。


2019年9月11日水曜日

休題 その二百六十二



 この前の閑話では、源次郎沢をF5迄やって花立へ登って下り、一泊して散々虫に喰われ、翌朝里湯に行ったら工事の為休業だったと言うあたり迄触れた。二人とも喰われた所(多くて特定できない)が痒いので、里湯の塩湯を楽しみにしていたのに。
 二つ説明しよう。里湯の内風呂は新しく市が掘った原泉なのでとても深く、塩が解けだして塩辛い。虫に刺されたら塩が痒み止めになる。以上二つでした。
 では、梵天荘に行こう。少々歩かせるのがバテ切ったYには気の毒だが、こんな機会でもなければ行く事もあるまいて。
 フロントに立って声を掛けるが留守だ。ドアは開け放たれていたから営業中だろう。何時もの通り、勝手に石段を登って風呂場へ向かう。
 梵天荘の湯は古い原泉なので塩辛くはない。しかし汗を流して湯に浸かると痒みも消える思いだ。小さい湯船なのでYには物足りないかなと案じていたが、御気に召したのは何よりだ。こじんまりしていても、非常に感じの良い湯船なんでね。Yは里湯の広い湯船を何時も喜んでいたが、広くても狭くても、良い風呂は良いって事なんでしょう。
 ゆっくり入ってからフロントに戻るが、未だ無人である。Yを女将に会わせたかったが仕方ない。女将の相模弁も聞かせたかった。尤もYは宇都宮出身だから、あの微妙なイントネーションは絶対に理解不能でしたw
 「お留守でしたので勝手に入浴しました」とメモを付けて二千円をカウンター裏の電話の脇に置く。これでメモと料金を置いておくのは二度目だ。
 この小さな旅館も女将が元気なうちだけだろう。今だって採算は取れてるんだろうか、と余分な心配をする有様だ。
 又暇をみて訪れましょうか。

2019年9月8日日曜日

閑話 その三百一



 途中の流れで泥塗れの靴や地下足袋を洗う。テント場は独占で良いのだが、水場が締められていて川の水を汲む。あと虫も独占なのだ。テントを張って、群れたズボンを脱いで表に干してテントに入ると、手足合わせて四十ヶ所(!)も喰われていた。
 Yも相当やられたが、あたし程じゃない。あたしゃあパンツ姿だっただで刺すとこが多かっただよう(涙)。どこが痒いのか分からない状態、そこらじゅうが痒いだよ!
 乾杯! とやってると、ザーッ!と来た。雷も鳴る。幾ら降っても小川のテントはびくともしない。盛大な雨音を楽しみ乍ら飲んだですよ。豪華でしょう?
 とは言ってもYの酒はすすまない。何時もの半分以下だっただろうか。フラフラになるだけあって、疲労はしているのだろう。唯不思議なのは食べられて眠れる事だ。既述だが、フラフラになる程疲労すると、普通は食べられなくなる。そして眠れなくなる。Yにはそれがない。喰えて、凄く良く眠る。
 翌朝には雨は上がっていた。干すつもりで表に掛けておいたズボンは、それでも生乾きにはなっていた。五時には目を覚ましたので時間はたっぷりある。ノンビリとコーヒーから始める。鶴巻温泉は十時にならなきゃ始まらないのだ。
 八時前に出発、悠々と大倉だと思ったがそうは問屋が卸さない。Yは昨日の疲れを引き摺って足が進まない。やっとこさっとこ大倉に着いたのは十時を過ぎていた。
 暑さと蒸れにやられたのだろう。年と共にYは暑さと蒸れがダメになったって事だ。涼しければ大室山だって登れたのだから。兎に角普通じゃない汗かきなのだ。そりゃあ足もつるだろうよ。
 渋沢に出てハコ蕎麦で第二次朝飯。鶴巻温泉で下車、里湯に向かうと工事の為に休業だった。そして梵天荘に行った話は休題で。

2019年9月3日火曜日

閑話 その三百



 空が切れて、もう稜線だろうと思っても登りは続く。小休止して損害を調べる。虫に喰われた痕と蛭にやられた所をチェックしたのだ。そう、源次郎に蛭が出たんですよ!
バカな経路で巻いて、夢中で足掻いていた時に喰われた。その後もたまにチェックをすると、何匹もくっついていたりする。とうとう源次郎も蛭に汚染されちまった。 
 歩き出して間も無くバカ尾根、大通りである。花立山頂と花立小屋の中間部に出た。Yを振り返ると大分後ろにいる。懐かしい言葉を叫んだ。「夢泣くな!」。いやあ、何年振りに使っただろう。昔はしょっちゅう使っていた様な覚えがある。結構ヤバい山登りばっかりやってたんですなあ。
 下りに掛かればYも大丈夫、尾根筋は風も通るしぃ、ってのは甘い考えだった。大階段を下る頃は元気だった。天神尾根を下り出した時はフラフラで、段差が大きいと偉く苦労をしている。一気に下れると思ったが、ヤットコサで、テント場到着は十六時半にはなるだろう。遅くても無事に着ければ良いのだ。
 九十九折れ(つづらおれ)が続く。あたしが角を曲がって進むと、その前の角を曲がってYがこっちに向かって来る形になる。Yが足を滑らせて、宙を掴んでその侭落下し、下の道で止まるかと思ったが更に落ちたが、鹿止めネットがあって直ぐに止まった。
 落ちる一部始終を目撃したのは初めてだ。ガランガランと、切り株や岩のある所を落ちる。2m2,30cmの落下だったが、そういう固い物にはぶつからなかった。木の枝で頭を打った位だ、と言う。何とラッキーなYなんだ! 一つ間違えれば大怪我だ。あ、滑
ったと思った時に木を掴もうとしたが掴めなかった、とYの談。
 川音はしているが中々着かない。そういうもんなんです。開けない夜は無い、やがて源次郎の堰堤に、スタート地点に立った。(続)